2017年4月10日月曜日

複素数の問題を幾何の問題にしてしまう:東大2017問題3

複素数を用いた問題。でも実際は図形の問題に過ぎない。予備校が発表した模範解答は、どれも複素数の性質を駆使した「エレガントな」解法を採用しているようだが、よっぽど複素数の美しさに心打たれてない限り、実数+図形問題に落として考えた方が勉強時間の節約になる。つまり、複素数が苦手な人向けの模範解答を今回は考えてみよう。

[問題文] 原点以外の点zに対し、w=1/zとする。
(1)αを0でない複素数とする。点αと原点Oを結ぶ線分の垂直2等分線をLとする。点zがLを動くとき、点wの軌跡は円から1点を除いたものになる。この円の中心と半径を求めよ。

[解答] 複素数zは2つの実数x, yを用いて、z=x+iyと表せる。これをxy-座標系と同一視することができるから、zを点(x,y)と解釈することができる。

さて、w=1/z = (x-iy)/(x2+y2) = u+iv とする。u, vは実数であり、今x,yによってパラメータ表示されている。すなわち、

u = x/(x2+y2),  v = - y/(x2+y2) ..... (1)

ただし、x2+y2=0の場合は除外する必要がある。 この表式からxとyを消去して、s,tだけの関係式を求めることができれば、それが求める軌跡となる。しかし、まだzが線分Lの上を動くという条件を使っていない。この条件を使う前に、「Lの上」というどんぴしゃの条件を少し緩和して、一般の直線上をzが動く場合をまずは考えて見よう。つまり、xとyの間には線形関係、ax+by+c=0, (a,b,c)は定数、が成立している場合を考えることにする。

この条件を適用すると、パラメータ表示の式(1)からyもしくはxを消去することができる。ここでは、問(2)のことを考え、xを消去してみることにする。つまり、a≠0を仮定して、x = -(b/a)y-(c/a)と条件式を変形し、(1)からxを消去する。
ここからyを消去するのは、一見非常に難しいことのように思える。しかし、問題文には「軌跡は円となる」とありがたいヒントがあるので、それを利用することにする。つまり、中心(u0,v0)と半径Rを未知数として、

(u-u0)2+(v-v0)2=R2 .........(2)

と書き下し、そこに上のパラメータ表示を代入する。すると、(2)式の左辺は、yについて4次式同士の商の形になる。
望むらくは、上の表式において、「分子 = 半径の自乗×分母」の形が実現していることである。4次の項を比較して見ると、この構造が可能かどうか見当がつく。分母の方は(a2+b2)2である。一方、分子の方は
と計算される。したがって、半径の目星として
 が成立していたらとても嬉しい。この予想を元に、今度は0次の項を比較する。そうすると、ac2(a+2cu0)=0という条件式が手に入る。a,cともに0でないとすると
を得る。次は3次の項を比較して見る。そうすると、2a(a2+b2)(bu0+av0)=0という条件式が得られる。a,bともに0でないとすれば、bu0+av0=0であり、これに上の結果を合わせると、
を得る。さて、これで答えの候補は見つかったが、残りの1次と2次の項に、これらの推測を代入し、辻褄があうかどうかは確認する必要がある。実際にやってみると、上の推理に基づいても矛盾のない結果をC1, C2について導出することができる。計算量はそれなりにはあるが、それほど複雑でもない。ここでは計算の詳細は省略する。

以上の結果をまとめると、求めるべき解は

となった。これまでの考察により、直線ax+by+c=0上を動くzに対し、w=1/zは円の軌跡を与え、その中心と半径は上の表式で一般に与えられることが示された。

さて、この問題で与えられた条件を使って、a,b,cに具体的な値を入れてしまおう。それがこの問の最終的な解になる。

まずα=α0+iα1とおく。α0, α1は実数である。

直線Lの方程式を得るには、線分L'(すなわち原点Oと点αを結ぶ線分)の傾きを知る必要があるが、それはα10と与えられる(これはαの偏角をθとしたとき, tanθに対応している)。したがって、直線Lの傾きは-α01となる(L'の垂直二等分線だから)。また、直線Lは、L'の中点α/2を通過する。したがって、Lの方程式は y = -(α01)(x-α0/2)+α1/2 と書ける。もう少し整理して、a,b,cに対応するものを算出すると

a=α0,  b=α1,  c=-(α0212)/2

となる。したがって、
|α|2=αα*0212だから、円の中心w0、および半径Rを複素数を用いて表現すると
となる。これが最終的な答えである。

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